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「はあ、いや。もう手前どもは老いぼれ同然ですからな」
「相手は誰です?こゝの御隠居ですかい」
病人は十七になる相沢の一人息子で、県庁のある市の中学寄宿生だつたが、軽い肋膜炎でかなり前から家でぶらぶらしているといふことは、昨夜来た使ひの者から聞いていた。
六
房一は目を上げて何か訊きたさうにした。それを押へるやうに、
突然はじまつたこの二人の親密な往来を、小谷は苦笑しながら、半ば無関心で眺めた。女といふものは妙なことから仲よくなるものだ、と思つた。が、由子の口から盛子のことを聞くにしたがつて、彼は高間医院について満ざら他人でもないやうな気に自然となつた。
「こゝの消防演習をやつたのだ。そんなに騒ぐことはない」
「へえ、――どうもごていねいなことで――」
房一は大きくうなづいて見せた。もう獲物は大分前からとまつていた。
徳次は慌てた。
「よく来て下さいましたな。何しろ不便なところですから、途中が大変だつたでせう」
「どうも御苦労さま、暑いところを」
「どこの帰りかね」